公演記録
関西芸術座公演 No.189 (旧No./公演83)
虫
芸の虫の 激しさと切なさを描く
鬼才 藤本義一の青春の記念碑 再々演!
あらすじOutline
大阪は西成区。
飛田と新世界に挟まれゴタゴタと窮屈そうに軒をつらねる一画に戦後、落語、漫才、浪曲、奇術を職とする人々が集まった。人呼んで「芸人横丁」
コンビの亭主に死なれ売りものにならない漫才師の松子。艶歌師の若い宏次。喉を痛めて近頃はあぶれ続きの落語家円丸。他に夫婦漫才の英丹・新子。落語兼講釈の樽丸。奇術師の横田。
そこへ円丸が慢性のリンパ腫と信じこんでいる喉の病気が、実は咽頭癌だと、芸能斡旋業の牧林からもたらされる。これは他人事ではない。特に、白内障で片目を潰し夕凪橋で土方をやろうと決めている浪曲師の弓蔵には「芸の虫」として依固地なまでに自分の芸を守る円丸を考える時に痛いほど胸に響くのだ。
翌る日の夜。演芸会からの手土産の折詰と少量の酒でいつになく賑やかなチャブ台。
時代の流れは容赦なくこの横丁にも押し寄せ、牧林や放送局をバックにもつ若松座支配人の代々田が、テストにやって来る。ただしテストは二組だけ。チャンスを逃がすまいと、咄嗟に宏次と組む松子、それと円丸が選ばれる。「神さんは虫のわいを見棄てなんだ」と笑みをうかべる円丸をみつめる弓蔵の眼が、何故か異様に光る。
いよいよテスト。
何とか売りこもうと、即製の「現代的センス」をゴタゴタに盛り込んだ、松子・宏次の漫才。一方円丸は――師匠から受け継いだまを大事に守ることを生粋の上方落語と自負しているのだが――今、欲しいのは新しいセンスで大向うをわかす才で、古めかしい落語家は必要ではない、と代々田に言われる。
「己の芸を守って来たわいがなんで!!」
円丸は絶叫する。
翌朝。
松子と宏次が放送局へ出かけたあと、円丸を前にして芸人たちの表情は複雑だ。最後の花を咲かせようと、あたりくじを円丸にゆずった弓蔵の胸は、引き裂かれるように苦しい。
――がその苦悩の中から、弓蔵は新作を書くことに己の仕事をみつける。明暗二筋に別れてしまった朋輩――
横丁の芸人たちの胸に去来するものは――
公演チラシFlyer
スタッフ&キャストStaff&Cast
STAFF | CAST | ||
---|---|---|---|
作 | 藤本義一 | 円丸(落語家) | 山村弘三 |
演出 | 道井直次 | 弓蔵(浪曲師) | 山本 弘 |
装置 | 板坂晋治 | 松子(漫才師) | 和泉敬子 |
照明 | 前川佳通 | 宏次(艶歌師) | 水城なおき |
効果 | 田辺みちき | 樽丸(落語家兼講釈師) | 北見唯一 |
小道具 | 坂本真貴乃 | 横田(奇術師) | 梶本 潔 |
舞台監督 | 井上 諭 | 英丹(漫才師) | 寺下貞信 |
舞監助手 | 辻村孝厚 | 新子(漫才師・英丹の妻) | 小笠原町子 |
落語指導 | 桂 福団治 | なつ(弓蔵の妻) | 藤山喜子 |
漫才指導 | 大池 晶 | 牧林(芸能斡旋所長) | 溝田 繁 |
制作 | 柴崎卓三 | 代々田(若松座支配人) | 亀井賢二 |
柾木年子 | 東屋(貸衣装屋) | 森下鉄朗 | |
菊池久子 | 精神病院の看護人 | 大友俊廣 | |
近所の人たち | |||
ター坊(オカマ) | 藤田 望 | ||
さぶやん(労務者) | 田中政治 | ||
龍巻きの玄(やくざ) | 中本晋作 | ||
ユミ(貸衣装屋) | 岩村春花 | ||
おかねはん(老婆) | 真木幸子 |
上演記録Performance Record
日時 | 場所 | 備考 |
---|---|---|
1995年5月18日-20日 | エル・シアター | 大阪労演例会 |
1995年6月 | 巡演 |